お山のこんぴらさん はじめに
芦田川を彩る常夜燈。これらは主に水難防除に霊験あらたかな金毘羅さんが祀ってあります。その他に厳島神社や、住吉神杜、またはその土地の主だった神様に祈りを捧げたしるしがあります。谷間にあり、あまり水運とは関係ないところに立っている常夜燈もあります。それには田畑が流水で荒らされないように、または旱魃で水がなく困ることがないように、との祈りが籠められています。また集落の主産物や住人が水上運送に関係していたと思われるのもあります。
備後地方には、神杜や寺院のそれと違って、このような水に関係のある常夜燈が沢山あります。その殆どは百年以上経っています。この百年の間の世の中の移り変わりはとても激しく、電信・電話が出来、飛行機が飛び、流通は鉄道や車が主流となり、あれよあれよと言うばかりの百年でした。われわれはただ新しい物、便利なものに目を奪われて、 それを利用することだけに躍起になって来たのではないでしょうか。
常夜燈を通じて、わたしは幕末・維新の粋を見るようです。この歴史的文化財を、ほかの消費財と同一視して粗末に扱ってはいけないと思います。
調査漏れ、間違いがあれば、お知らせ下さい。ただ私は掛かりきりになれませんので、かならず書面でお寄せ下さいますよう。改訂版の時の参考にさせていただきたいと思います。