「錆びない鉄」といえばステンレス鋼を思い浮かべる方が多いでしょうか。 ステンレスと言えば 18-8ステンレス (SUS304)が代表的です。 鉄とともに8~10.5%のニッケルと18~20%のクロムを含んでいて、 金属中のクロムが空気中の酸素と結合して表面に酸化皮膜を形成しています。 簡単に言うと金属表面がクロムの錆に覆われている状態です。 この酸化物が空気中の水分や酸素から金属を守りサビを防いでいます。
ステンレスは20世紀初頭にヨーロッパで発明されたばかりで、 その歴史は意外に浅いのです。
しかし、1500年以上前も前に作られたにもかかわらず、 いまだに錆びていない鉄があります。 それはインドのイスラム教寺院「クトゥブ・ミナール」にある、 アショカ・ピラーといわれる鉄柱です。 この鉄柱は
・高さ9m(地上に6.9m/地中に2m)
・直径44cm
・重さ6トン
屋外にあり熱風とモンスーンなどの強い風雨にさらされながらも、いまだに錆びていません。 99.72%という高純度の鉄で作られており、その他は不純物を含有するだけで、錆びてしまってもおかしくありません。
インドは大気中の湿度が低くまた大気汚染も少ないので錆を防いでいる?
現地の人々は体に油を塗って太陽光線から肌を守る習慣があるそうです。この鉄柱に触ると幸運に恵まれるとも言われていて、体に塗った油が柱につくことで錆を防いでいる?
インドで産出される鉄鉱石にはリン(P)が比較的多く含まれています。また、当時のインドでは鉄を精製する際にカッシア・アウリキュラータというリンを含む植物を加えていた記録があるそうです。 リンを豊富に含んだ鉄を薄い円盤状にして加熱しながら叩くと、鉄の表面はリン酸化合物で覆われます。 その円盤を積み重ねてさらに叩いて一体化させれば、鉄柱の表面がリン酸化合物でコーティングされ、錆に強い鉄柱が完成する??という説です。